青葉が目にまぶしい季節となり文芸誌「天気図」第22号が発刊の運びとなりました。
巻頭作家は『北の文学』74号優秀作賞、第36回「さきがけ文学賞」など多数の文学賞を受賞の気鋭の作家、浜矢スバル氏です。「正しくない執筆動機」で登場いただきました。伸びやかで面白味のあるエッセイをどうぞご堪能ください。ナゾの人物の正体が気になるところです。
なお、参加作品は2作品あります。『「北の文学」83号優秀作』受賞の佐藤幸浩氏と、俳人であり『第76回岩手芸術祭随筆部門芸術祭賞』受賞の兼平玲子氏に書いていただきました。
佐藤氏の作品「ケロケロ人」は自治活動に追われる持病持ちの退職公務員の悲哀が独特の視点で書かれてあります。
俳人(『樹氷』同人)兼平氏の作品「『言わずもがな』のこと」は、血の繋がりより濃い愛情の絆で結ばれた育ての親への感謝の言葉が綴られております。
同人作品の概要は以下のとおりとなっています。今号はシリーズもの作品がすべて完結となっています。どうぞゆっくりお楽しみください。
購入は県内書店または、こちらからお買い求めいただけます。試し読みもあります。
主な掲載作品(敬称順)
●「評論」
「南北朝時代終焉の真実Ⅵ ~長慶天皇伝説と南部氏~〈最終回〉」四ツ家絵里
南北朝時代…」シリーズが今号をもって6回で最終回。長慶天皇伝説をもとに南部氏の謎に迫りました。点となって残された史実に歴史に埋没されたできごとを作者ならではの見解で線にして発表した意欲的評論。
●「エッセイ」
「文章のスタイル」野中康行
日本エッセイストクラブ・会員の野中氏が、50年以上かかって獲得した自身の文章スタイルについてを語る。
●「小説」
「親子」渡邊治虫
5年前に急逝した妻の有紀子。残された夫の鉄次と高校受験を控えた息子の賢吾は有紀子の存在を感じながら前へと進んでいく。父子の葛藤が最後は爽やかに活写された作品。
「青い季節がめぐるまで」多田加久子
「モライユ記念日」(「北の文学74号」で発表された作品)のシリーズもの。前作に続き年の離れたカップルに焦点をあてている。2人はついにスペインとカナダの国境を越えて結婚式を挙げる。細やかに描写された愛の過程と結婚式のシーンがみどころだ。
「スグリの旅(全篇)」立川ゆかり
19号から連載の小説も今号で最終回。ナゾの怪鳥の正体やいかに。カッパのスグリが大空襲に遭いつつ人間を助ける場面が見どころだ。今号は全篇一挙掲載の読み切りである。
●「ノンフィクション」
「カオ・かお・顔(下)」菊池尋子
顔がテーマの怖いノンフィクション。「上」に続き「下」の巻である。「顔 ア・ラ・カルト」「顔 ショートストーリー」の2つに章立てされお話は合わせて計17話。すべて実話というのが恐ろしい。中でも見逃せない作品は「リサ」。読みごたえ充分で夜寝る前に読むと大変なことに。
●「時代小説」
「峠を越えて来た男」小原光衛
晴雨考(気候書)の研究をする新吉は、思いを寄せた女性、七(しち)を吹雪になる天候を読めずに凍死させてしまう。悔やむ新吉は物識りで高名な菅江真澄に出会い、胸のつかえをおろす。
「帰って来た男」浅沼誠子
同心の神田杉之介は卯之吉らしき人物の噂を聞く。借金のために行方をくらました家庭人としては駄目な男である。しかし、物語のラストで卯之吉は救われる。家族の温かさが伝わる盛岡を舞台にした時代小説。
●「詩」
「朝の報告」安住幸子
異世界で生きているようなおばちゃん。その彼女から聞いた夢の話の迫力と、その時もたらされる感覚に気圧されることだろう。ちょっぴり怖いが元気をもらえる詩である。
「彗星木」杉田未来
宇宙からもたらされ、長い時をへて変容を続けていく自然界の不思議。組み込まれた現象の中にはロマンを感じさせてくれるものもある。彗星木の結末に心が癒された。
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